パイプオルガンとエレクトーン
先日友人が所属するアマオケの演奏会の手伝いに行きました。
そこにはホールにパイプオルガンがあって、サン=サーンスの交響曲第3番オルガン付がメインの曲でした。
手伝いはチケットを確認する係だったので、それが終わったら演奏を聴きました。
パイプオルガンの大きさや音に圧倒されました。
実はパイプオルガン、私たちが普段目にするピアノや電子オルガンとは、かなり違った楽器です。
そして知れば知るほど、
「よくこんなものを作ったな……」
と思わされる、とんでもない楽器でもあります。
ピアノの仲間……ではない?
パイプオルガンには鍵盤があります。
そのため一見するとピアノの仲間のようですが、音の出る仕組みはまったく違います。
ピアノは、鍵盤を押すと内部のハンマーが弦を叩いて音を出します。
ところがパイプオルガンには、基本的に「弦を叩く」という仕組みがありません。
鍵盤を押すと空気の通り道が開き、圧力をかけた空気がパイプへ送られます。
つまり、ものすごく大ざっぱに言えば、
巨大な笛を、鍵盤で演奏している楽器
なのです。
どうしてパイプがあんなにたくさんあるの?
ここがパイプオルガンの面白いところです。
基本的に、1本のパイプが担当する音程は1つ。
ところがオルガンでは、同じ「ド」でも違う音色を出したくなります。
太く力強いド。
細く柔らかいド。
フルートのようなド。
トランペットのようなド。
そこで、音色ごとに別のパイプのグループを用意します。
この音色のまとまりを「ストップ」と呼びます。
演奏者はストップを選ぶことで、使うパイプの組み合わせを変えていきます。
そのため大規模なパイプオルガンになると、パイプの数は数千本にもなります。
もはや「楽器」というより、小さな工場のようです。
なんで鍵盤が何段もあるの?
パイプオルガンを見ると、手で弾く鍵盤が2段、3段、4段……と重なっていることがあります。
さらに足元にも大きな鍵盤があります。
手だけでは足りず、足まで使います。
なかなか容赦がありません。
複数の鍵盤には、それぞれ異なるパイプ群を割り当てることができます。
たとえば、
「右手はこちらの音色」
「左手はこちら」
「低音は足で」
というように、ひとりの演奏者がいくつもの音色を同時に操れるわけです。
これがパイプオルガンの圧倒的な表現力につながっています。
実は「建物」まで楽器の一部
そしてパイプオルガンには、ほかの楽器にはあまりない大きな特徴があります。
それは、
置かれる建物によって楽器そのものが変わってしまう
こと。
ヴァイオリンなら、楽器をケースに入れて別のホールへ持っていけます。
ピアノも大変ではありますが、運ぶことはできます。
しかし巨大なパイプオルガンは、その建物のために設計され、設置されることがあります。
空間の広さ、天井の高さ、残響、パイプの配置。
そうしたもの全部が音に関係します。
だからパイプオルガンの場合、
「楽器を聴く」というより「楽器と建築が一緒になって生み出す音を聴く」
と言ったほうが近いのかもしれません。
なぜ「楽器の王様」と呼ばれるのか
パイプオルガンは非常に広い音域を持ち、さまざまな音色を組み合わせることができます。
小さな笛のような繊細な音から、建物全体が震えるような低音まで。
たったひとりの奏者が、両手と両足を使って巨大な楽器全体を動かします。
そのスケールを考えると、「楽器の王様」と呼ばれてきたのも納得できます。
そして、この巨大な音の世界を存分に使った作曲家として忘れられないのが、ヨハン・セバスティアン・バッハです。
有名な「トッカータとフーガ ニ短調」の冒頭を思い浮かべると、
「ああ、あの音!」
となる方も多いでしょう。
エレクトーンにもつながっている?
現代では、巨大なパイプを並べなくても電子的にさまざまな音色を作れるようになりました。
電子オルガンやエレクトーンも、技術的にはまったく別の楽器ですが、
鍵盤を使い、複数の音色を組み合わせ、手と足を使ってひとりで大きな音楽世界を作る
というところには、オルガン文化から続く面白いつながりがあります。
エレクトーンを習っている人がパイプオルガンを見ると、
「鍵盤が何段もある!」
「足鍵盤がある!」
「音色を選んで組み合わせる!」
と、意外な共通点に気づくかもしれません。
一度は「生」で聴いてみてほしい楽器
パイプオルガンの魅力は、録音だけではなかなか伝わりません。
特に低い音。
耳から聞こえるというより、空気が動き、身体に響いてくるように感じることがあります。
巨大な空間そのものが鳴っているような感覚です。
もしコンサートホールや教会などでパイプオルガンを聴く機会があったら、ぜひ一度、生の音を体験してみてください。
「鍵盤楽器」という言葉から想像していたものとは、ずいぶん違って聞こえるかもしれません。
何百年も前の人たちが、電気もコンピューターもない時代に、空気とパイプと機械仕掛けだけでこれほど巨大な音楽装置を作り上げた。
そう考えて眺めると――
パイプオルガン。
機会があったらぜひ聴いてみてほしいです!